海に遺骨を流し葬送する海洋散骨。海洋散骨は法的にも問題のない行為ですが、他の方々の迷惑とならないよう、さまざまな点で配慮しなければなりません。
今回は、散骨をする際の注意点に関して、瀬戸内海の海洋散骨を中心にサポートを行っているブルーマイルゥーの中井良紀様にお話をお伺いしました。散骨をご検討されている方々はどうぞ参考になさってください。
散骨をする際は節度と配慮が大切
-海で散骨をする際の注意点を教えてください。-
散骨は「葬送のための祭祀で、節度を持って行われる限り問題はない。」というお話をいたしました。では「節度を持って」とはどういうことなのでしょうか。
それは「遺骨を撒く行為に対して、周りの人々の嫌悪感や不快感といった感情に十分考慮すること」です。すべての人々が散骨に賛成し良く思っているわけではありませんので、周りに十分な配慮をして散骨を行う必要があるのです。
例えば、漁業・遊漁船関係者、船舶関係者、観光業関係者、マリーナや港湾関係者、レジャーや一般の方々など、広い方面への配慮が必要となるのです。また自身の安全面にも細心の注意が必要となります。
具体的な注意点について見てゆきましょう。(無秩序な行為により、一部の自治体においては、条例で海洋散骨に対しての方針を示しているところもあります。)
粉骨の必要性
遺骨は、そのままの形で散骨してはいけません。必ずお骨とわからない程度にまで粉骨化(1?2�o以下)する必要があります。お骨をそのままの形で散骨すると、事件性を疑われる可能性もあり、刑法の遺骨遺棄罪にも抵触する恐れがあります。
散骨場所の選定
海ならばどこい撒いても良いというわけではありません。必ず問題の起こらない海域を選定する必要があるのです。
具体的には、
- 陸地から1海里(約2�q)以上離れた沖合でおこなうこと。(海水浴場や潮干狩り場などの海辺、釣り場、港内、その他人目に付きやすいところは避けなければなりません。)
- 漁業権範囲や養殖設備などからも距離を置くこと。
- 船舶の航行が多い航路周辺は避けること。
- 周囲に船舶がある場合、他船の動きに注意し、自船の行動を判断できないだけの距離を取って行うこと。
などです。
特に人目に付く海域や漁業権範囲などは、精神的損害や風評被害によって大きな問題に発展する可能性があります。また航路近辺などは他船との接触事故につながる可能性もあるのです。
出港地(桟橋やマリーナ)での注意事項
桟橋やマリーナは一般の方々も利用する公共の場です。周辺への配慮とトラブルの事前回避のためにも以下の注意点があります。
- 乗船時の喪服の着用は禁止です。平服での乗船をお願いします。
- 遺骨や遺影、お花などは海洋散骨を連想させます。港や桟橋においては袋に入れたりカバーをかける必要があります。
- 散骨業者は案内板設置や口頭での案内は禁止です。
- 周囲に人がいる場合、散骨業者は説明等を船内でおこなうこと。
- 散骨後の処分品などを桟橋周辺で廃棄するのは禁止。
などです。
散骨実施時における注意点
散骨実施においても次の点に注意する必要があります。
- 自然に戻らない副葬品(金属・ビニール・プラスチック・ガラスなど、その他自然に戻らない人工物)は海に撒いてはいけません。
- 大量の献花(生花)や献酒(お酒など)は避けましょう。海洋汚染の原因にもなりますし、漁業関係者等とのトラブルにつながる可能性があります。(ブルーマイルゥーでは、ごく少量の花びらと水溶性紙で作ったお花を使用しています。)
- 散骨中も、接近してくる船舶など常に周囲の状況に注意すること。
などです。
安全面への配慮
海洋散骨は海上で行われるため常に危険にさらされており、事故やトラブルを未然に防ぐためにも、安全を最優先させる必要があります。私ども業者側が特に気を付けているのが以下の点です。
- 気象・海象の危険性を十分に理解し、常に最新の気象情報を入手しておく必要があります。
- 風速・波高などによる出航停止基準を確立し、気象状況によっては出航中止・見合わせの判断をします。
- 船舶の発航前点検を十分に行うこと。
- 出航前に乗船者には必ず航行時の注意事項を説明をすること。また船舶によっては救命胴衣の着用をすること。
- 航行中・散骨中は常に乗船者の安全・体調に気を配ること。
などです。
天候不良による出港中止について
前述いたしましたが、台風や季節風などによる強風時、大雨時(通常の雨天の場合は出航します)、濃霧による視界不良時などで出航不可と判断した場合は出航中止となり、順延となります(大雨・濃霧の場合は、出航を数時間見合わせる場合もあります)。
ブルーマイルゥーでは、出航可否の判断・連絡は、前日か2日前には入れるようにしております。特に遠方からお越しの方は交通や宿泊の予約を伴いますので、「気象状況によっては出港中止・順延になる可能性がある」という点は十分にご理解をいただければと思います。これは海洋散骨最大のデメリットでもあります。
ご遺骨をすべて散骨するか、あるいは一部を残すかという選択
遺骨をすべて散骨
私どもにご依頼いただく海洋散骨で、約半数の方がすべてのご遺骨を散骨なさいます。これは故人の「すべての遺骨を散骨してほしい」という生前からの遺言によるものです。
遺骨の一部を残す
残りの半数の方はご遺骨の一部を残されますが、それは「遺骨のすべてを撒いてしまうと寂しい」という理由が大きいです。供養方法としては「お墓もあるので、お墓に埋蔵。」「お寺様で永代供養」「手元供養」などがあります。
手元供養については、「手元供養品などに入れて、いつも身に着けておきたい。そばに置いておきたい。」という方と、「自分が亡くなった時に一緒に撒いてもらうために少し残しておく」という方がいらっしゃいます。
これらは、故人やご遺族様のそれぞれの考え方ですので、これが正しいという方法はありません。ただ、すべて撒いてしまうと元に戻せませんので、十分に考えておく必要はあると思います。
自然の一部と感じる海洋散骨
-海で散骨をすると、どのような気持ちになられている方が多いですか?-
故人の生前からの遺言によって行われることが多く、散骨を終えられたご遺族様の多くが「故人の望みをかなえられて良かった」と安堵なさいます。
また、大海原での散骨でよく聞く声は
- 「自分たちは自然の一部なんだと感じました」
- 「この大自然から、故人に見守られているような感じがします。」
- 「故人がいつも傍にいるように感じます。」
というものです。
青い海と青い空が広がる大海原での散骨は、「自然に還ってゆく」という感覚を実感します。自然の循環の流れにそって、新たな生を育む母なる自然に還ろうとする自然観。ここに海洋散骨の原点があるのではないでしょうか。
節度と配慮を持って心安らぐ散骨を
節度と配慮が必要な散骨。それでも、散骨をされる方が増えてきているのは、散骨を通して得られる心の安らぎが背景にあるのかもしれません。
今回の記事は、瀬戸内海を中心に海洋散骨をサポートされているブルーマイルゥーの中井良紀様にお話をお伺いしました。散骨業者をお探しの方は下記ホームページよりご連絡ください。
未来創想では、ご遺骨の一部を手元に残しておける小さな骨壷や遺骨ペンダントなどの手元供養品を取り扱っています。散骨をされる際にもし寂しさを感じられるようでしたら、ぜひあわせてご検討ください。